今年創立25周年を迎える演劇集団キャラメルボックス。記念すべき2010年の第1弾となる、約60分で魅せる短編演劇<ハーフタイムシアター>の2本立て公演が、18日に大阪?サンケイホール ブリーゼで開幕した。上演作品は、『黄泉がえり』などのベストセラーで知られる人気作家?梶尾真治の『クロノス?ジョウンターの伝説』シリーズを原作にした『ミス?ダンデライオン』と『南十字星駅で』。どちらも、過去に遡ることができるけれど、短い時間しか過去に留まれず、反動で未来に弾き飛ばされてしまう不完全なタイムマシン「クロノス?ジョウンター」を使い、愛する人を救うために過去へと向かう意志の強い主人公が描かれている。
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多くの要望に応え、4年ぶりに再演される『ミス?ダンデライオン』は、医者としてキャリアを積んできた30歳の鈴谷樹里の物語。11歳の頃に入院していた病院で、毎日楽しい話を聞かせてくれた青年「ヒー兄ちゃん」のことが今でも忘れられない樹里は、ある日彼の命を奪った難病?チャナ症候群に効く新薬を手にする。そして、「ヒー兄ちゃんを助けたい」という想いをエンジンに、時空を超えて運命を変えようと動き出す。
一方、新作にしてシリーズ完結編となる『南十字星駅で』は、79歳になったクロノス?ジョウンターの開発者?野方耕市の物語。開発が中止となって以来、博物館に収蔵されていたクロノス?ジョウンターの修理を依頼された野方は、その修理中に時空を飛ぶ法則の新たな捉え方を発見する。今まで無理だと思っていた57年前まで遡ることができる――。そう気付いた彼は決心する。自分のせいで死なせてしまった親友を救うために過去へと向かおう、と。
クロノス?ジョウンターで過去へ飛ぶことは、多くのリスクを伴う。そもそも自分の未来を犠牲にすることになる。それでも彼らは飛ぶ。祈りにも似たその想いを、『ミス?』の樹里を演じる岡田さつきは、ほとばしるほどの熱演で真っすぐに表現。『南十字?』の野方に扮する西川浩幸は、老人ならではの諦念とこみ上げる悔恨をないまぜに、命を燃やすように演じる。そんな彼らの姿が、緩急に富んだ展開の中で、くっきりと輪郭をもって浮かびあがり、観客の胸に迫ってくる。このダイナミズムこそが、ハーフタイムシアターの醍醐味。信じられないものを信じさせる力を感じた。
大阪公演は、2月22日(月)まで。その後、2月26日(金)から28日(日)まで愛知?名鉄ホール、3月4日(木)?5日(金)に東京?なかの ZERO大ホール、3月12日(金)から4月4日(日)まで東京?サンシャイン劇場と各地を回る。チケットはいずれも発売中。
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