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3Dグラフィックスをネットワーク越しに転送できる「ELSA

日付:2010/10/27  転載:http://www.iroiro-rmt.jp  アクセス回数:1475

ELSA VIXEL V200
メーカー:エルザジャパン
問い合わせ先:エルザジャパン サポートセンター TEL 03-5765-7615
実勢価格:11万円前後(2009年3月21日現在)
 高性能な3Dグラフィックスカードを搭載した自宅のPCでゲームを実行しておいて,それを外出先でリモートコントロールしたい。そんなことを考えたことがあるPCゲーマーは少なくないだろう。
 外出先からリモートでPCを操作する手段としては,Windows標準のリモートデスクトップをはじめ,「VNC」(Virtual Network Computing)や「LogMeIn」など,有償無償を含めてさまざまな選択肢があるのだが,いずれもGPUを用いたリアルタイム3Dグラフィックス表示まではサポートしてくれないので,3Dゲームで利用することはできない。

 だが,グラフィックスカードでお馴染みのエルザジャパンから最近リリースされた「ELSA VIXEL V200」は,そんな従来型リモート操作の限界を打ち破り,3Dグラフィックスのリモート表示を可能にするという。本来的には,ビジネス市場――要するに“お仕事”向けのソリューションで,ゲーマー向けではまったくないのだが,「ネットワーク越しに3Dグラフィックスを利用できる」となれば,やはりゲームで使ってみるほかない。
 エルザジャパンに無理を言って実機を借りてみたので,“リモート3Dゲーム”の夢はかなうのか,試用レポートをお届けしたいと思う。


グラフィックスカードのDVI-D出力をキャプチャして

ネットワークで転送するELSA VIXEL V200


 ELSA VIXEL V200は,カナダのTeradiciが開発した「PC-over-IP」という独自技術を採用する製品だ。エルザジャパンとTeradiciの提携に関しては2008年5月27日の記事でお伝えしているが,枝葉を全部カットして一言でまとめるなら,PC-over-IPというのは,ネットワーク越しにPCを遠隔操作する技術で,ELSA VIXEL V200は,これを実現するためのハードウェアである。

 下に引用したのは,エルザジャパンが公開しているELSA VIXEL V200の接続イメージだが,同製品は,遠隔操作する対象となるPC側に接続するPCI Express x1カード「ELSA VIXEL H200ホストカード」(以下,ホストカード)と,一般ユーザー向けブロードバンドルーター製品のような外観をしたクライアント機,「ELSA VIXEL D200デスクトップポータル」(以下,デスクトップポータル)によって構成される。今回入手した製品ボックスにも,各1機が含まれていた。

ホストカードを接続したPCを,専用クライアントとなるデスクトップポータルからコントロールできるのが,ELSA VIXEL V200最大の特徴。ホストカードとデスクトップポータルは後から追加可能で,例えば1台のPCを2台のデスクトップポータルで共有したりすることも可能という。なお,ホストカードには「Tera1200」,デスクトップポータルには「Tera1100」という,Teradici製プロセッサをそれぞれ搭載する

ホストカード(ELSA VIXEL H200)。遠隔制御したいPCにこのカードを取り付けるわけだ。カード長は168mm(※突起部除く)で,Low Profile対応のシングルスロット仕様
ホストカードの接続インタフェース。左が1000BASE-T LAN用のRJ-45,右がデュアルDVI-D入力用のDMS-59コネクタになる
 まずはホストカードから紹介してみよう。
 外部インタフェースはDMS-59(DVI-D×2)とRJ-45(1000BASE-T LAN)で,ぱっと見,グラフィックスカードのような佇まいだが,実際には,付属するDVI-Dケーブルで,グラフィックスカードのDVI-D出力を入力する仕様。入力されたビデオ信号は,ホストカード上のプロセッサによってリアルタイム圧縮され,ネットワークを介してデスクトップポータルへ送出される仕掛けだ。「ディスプレイ出力のリモート送信」という処理に限れば,ホストカード以外のハードウェアは利用しない。

 DVI-Dの2系統入力に対応することからも分かるとおり,ELSA VIXEL V200はデュアルディスプレイをサポートする。1系統当たり最大1920×1200ドットの解像度に対応するので,やろうと思えば3840×1200ドットのディスプレイをリモートから制御することも可能だ。
 ただし,1枚のグラフィックスカードでデュアルディスプレイ出力を行おうとすると,(当たり前だが)ホストカードの差さったPC(以下,ホストPC)からのディスプレイ出力ができなくなる。デュアルグラフィックスカード構成をとるのでもなければ,基本的にはディスプレイ出力とホストカード出力を,クローンモードで利用することになるだろう。

グラフィックスカードとホストカードの接続イメージ

ホストカードを差した状態でPCに認識されるのはUSBホストインタフェースとHIDオーディオデバイスのみ。圧縮&送出用プロセッサはデバイスマネージャから見えないので,ドライバはもちろん不要だ。なお,ここでサウンドデバイスが三つ見えているのは,ATI Radeon HD 4870カードと,オンボードのサウンド機能も動作しているため
 ところで,PCを制御するためには,キーボードとマウス,そしてゲームプレイでは重要なサウンドもデスクトップポータルから利用できなければならないが,ホストカード上にはUSBホストインタフェースと,Realtek Semiconductor(以下,Realtek)製のHD Audioデバイスが載っており,両機能を,デスクトップポータル側から利用できる。
 両コントローラはいずれもクラスドライバで動作するため,Windows Vistaで利用する限り,別途ドライバを入手する必要はない(※Windows XP環境では,Realtekのサポートページからドライバを入手する必要あり)。

 また,リモートからPCを制御するに当たっては,PCの電源をオンにする必要もあるが,ELSA VIXEL V200では,ホストカードとマザーボードのATXパワースイッチコネクタをつなぐケーブルが用意されており,これを利用することで,ホストPCが電源オフの状態にあっても,デスクトップポータルからホストカードに接続を試みるだけで,自動的に前者の電源がオンになる仕掛けになっている(※デスクトップポータルにはリモートパワーボタンが用意されており,やろうと思えばホストPCの強制電源オフも可能)。
 これはなかなか便利で,おそらく,ホストカードは電源オフ時もPCI Expressから供給されるスタンバイ電源によって常に動作しているのだろう。なお,ホストカードは,PCI Expressによる電源供給が不安定な環境に備え,4ピン電源コネクタによる給電へ切り替えることもできる。

専用ケーブルでホストカードとマザーボード側のATXパワースイッチコネクタをつないだ状態。専用ケーブルは,PCのフロントパネル側スイッチからの電源オンにも対応できるよう結線されているので,PCを普段使いする場合にも問題は生じない。なお,ホストカードで専用ケーブルが接続されているすぐ近くに見えるピンヘッダが,外部給電用コネクタだ
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