NVIDIAは,ノートPC向けGPUの最上位モデルとして,「GeForce 8800M」を発表した。ここでは2007年10月25日に開催された先行技術説明会の内容をもとに,新しいGeForce 8800Mシリーズについて紹介したい。
GeForce 8800Mシリーズは,デスクトップ版
GeForce 8800 GTとほぼ同一のアーキテクチャを採用
NVIDIA,General Manager Notebook GPUs,Rene Haas氏 |
今回発表されたGeForce 8800Mシリーズは,先頃発表されたばかりの「普及型ハイエンドGeForce」である「GeForce 8800 GT」のノートPC版という位置づけの製品になる。そして,2007年中盤に発表されたGeForce 8700M/8600M/8400Mシリーズの上位に相当するモデルである。
トランジスタ数はデスクトップ版GeForce 8800 GTと同じ7億5400万個で,アーキテクチャも同一となる。ただし,「同一アーキテクチャだが,異なるチップである」ということが強調されたことから,チップ形成に用いるトランジスタタイプを省電力のものに変更してあることが推察される。ちなみに熱容量設計(TDP)は40Wと発表された。
ラインナップとしては,上位の8800M GTXと下位の8800M GTSの2モデルになる。デスクトップ版の8800 GTアーキテクチャなのにノートPC版になると8800M GTX/8800M GTSとなるのは少々ややこしいが,ノートPC向けGPUではよく行われるマーケティング/ブランディングの一環だ。
2006年と2007年のノートPC向けGPUのラインナップ比較表 |
ノートPC向けGPUの場合,ノートPC筐体の熱設計や消費電力設計の関係で動作クロックやグラフィックスメモリクロック,場合によってはそれ以上の製品専用のコンフィギュレーション変更が行われることがあるのだが,NVIDIAによるリファレンス?スペックとしては,以下の表のようになっている。
注目すべきは,GeForce 8800M GTX,8800M GTSでシェーダプロセッサ(ストリームプロセッサ)がそれぞれ
96基,
64基となっており,デスクトップ版の8800 GTと比べて16基,8800 GTXの128基,8800 GTSの96基と比較するとそれぞれ32基少なくなっている点だ。
GeForce 8800 GTコアと同一トランジスタ数であるということは,GeForce 8800M GTX/GTSにももっと多くのストリームプロセッサがあると推測されるが,発熱や省電力への配慮からか,ストリームプロセッサのクラスタを無効化してデスクトップ版よりも個数を削減しているようだ。
詳しく説明すると,GeForce 8000シリーズでは,ストリームプロセッサを16基単位で1クラスタ(1ブロック)としてまとめるアーキテクチャになっており,GeForce 8800 GTでは16×8=128基のストリームプロセッサがあると推察されている。しかし,1クラスタ(16基)が製造不良で機能しなくても製品として出荷できるように,歩留まり向上の観点から112基を出荷スペックとしているといわれている。
この理屈でいうと,デスクトップ版GeForce 8800 GTと同一のアーキテクチャであるノートPC版GeForce 8800M GTX/GTSにも,チップ上には128基のストリームプロセッサがあると推測される。つまりGeForce 8000M GTXは,2クラスタ分が機能しなくても出荷できる製品で,コストダウンにも一役買っていることが予想される。さらにいえば,3クラスタ分が機能しなくても,GTSとして出荷できる。もともとの歩止まりが100%に近ければ,このような方策を採る意味はないのだが,新しい65nmプロセスの歩止まりは,まだあまり高くないのであろう。
また,GeForce 8800M GTXのパフォーマンスはGeForce 7950 GTXのSLIよりも上を行き,GeForce 8800M GTSでもGeForce 8700M GTのSLIをしのぐほどだという。
3DMark06のパフォーマンスでは,SLI構成のGeForce 7950 GTXよりも上になる |
CLEVOの設計によるGeForce 8800M GTX搭載ノートを公開
デスクトップ版GeForce 8800 GTと同一アーキテクチャなので,当然,プログラマブルビデオプロセッサ(PVP)についても同一の第二世代のPVP2が実装される。なお,PVP2はGeForce 8700M/8600M/8400Mにもすでに搭載されている。
第二世代PVP2では,MPEG-2やVC-1,H.264などのコーデックに対応したハードウェアアクセラレーション機能を持ち,さらに映像ストリームの復号アクセラレーションに対応しているが,そうした機能がGeForce 8800M GTX/GTSにも搭載される。つまり,最新世代の「PureVideo HD」テクノロジーが提供されるということだ。
第二世代PVP2搭載で最新PureVideoHDが利用可能に | |
北米地域ではALIENWARE,Gatewayをはじめとした著名BTOノートPCメーカーからGeForce 8800Mシリーズ搭載ノートが発売される予定 |
先行技術説明会で公開されたGeForce 8800M GTX搭載ノートPCは,CLEVOが設計した
「M57RU」がベースとなっていた。
チップ自体はGeForce Go 7900シリーズやGeForce 8700Mシリーズとピン互換であるため,GeForce Go 7900シリーズやGeForce 8700Mシリーズ搭載ノートであればGeForce 8800M GTX/GTSへの移行も容易であると見られる。おそらく,TDPが40Wであれば熱容量設計的にも問題はないはずだ。
先行技術説明会の会場にいた関係者は,「日本ではマウスコンピューターの
m-Book GX57シリーズをはじめとして,いくつかのBTOノートがCLEVOのM57RUベースであるため,GeForce 8800M GTX/GTSノートが早期に発売されるのではないか」と話していた。 (トライゼット西川善司)
公開されたSAGER製GeForce 8800M GTX搭載ノートPC | 背面を見てみると「M57RU」のロゴが。CLEVO設計の証 |
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