2月2日,アトラスは同社の連結子会社であるシーアンドシーメディアの株式をPerfect World社に売却することが基本合意に達したことを発表した。Perfect Worldは,中国 完美時空の海外法人で,MMORPG「Perfect World」の海外版展開のほか,ライセンシング事業を行っているようだ。本社はTax Heavenとして知られるケイマン諸島となっている。
シーアンドシーメディアは,完美時空のタイトルを日本でほぼ独占的に展開してきたという経緯もあり,サービスするタイトルのうち,「TARTAROS-タルタロス-」「BLACKSHOT」以外はすべて完美時空のゲームとなっており,ビジネス的な部分での親和性はすこぶるよさそうだ。
アトラスは昨年秋にアーケードゲーム部門を畳んでオンラインゲーム分野に注力するため現ロッソインデックス(旧ゴンゾロッソ)を取得したばかりだが,従来傘下にあったシーアンドシーメディアのほうを手放すことになった。
この売却によるサービス体制への影響などは不明だが,今後は完美時空の作品が導入されやすくなる可能性は高い。中国でもトップクラスの開発力を持つ完美時空では多くのタイトルが開発されており,昨年のChinaJoyでは2Dなどライト方向を目指した作品しか出てこなかったのだが,昨年末には大型3DMMORPGの「神魔大陸」が発表されている。
売却の時期は平成22年2月末日ということで,かなり急な展開となっている。昨今はゲーム業界各社の業績悪化を示す決算が続いているため,今期の決算に合わせた売却かとも思われたのだが,アトラスの今期の業績予想では今回の売却抜きの段階で上方修正が入る堅調な成績となっており,赤字を埋めるためのものではなさそうだ。今回の売却は,アトラス,シーアンドシーメディア,Perfect Worldの三者にとって妥当な落としどころなのかもしれない。
現在,中国のゲーム関連企業は巨大な資本を有しており,各国のIP獲得や海外展開に積極的なところが増えてきているという。その流れの火付け役ともいえるのが,Perfect Worldの日本での成功であり,今回の売却劇が次の流れを生む可能性もありそうだ。日本のゲーム業界は,決して順風満帆とはいえないだけに,今後,日本のIPを欲する中国系資本の進出が続く可能性も大いにありそうだ。